時代劇の風景   ロケ地探訪

黒谷

− 真如堂 −

 真如堂の劇映画使用例は、牧野省三監督の本能寺合戦、吉村公三郎監督の源氏物語など渋いものが揃っている。
燃えよ剣でもここが使われていた。
石段半ばから本堂を見上げる 石段半ばから門を見下ろす

 真如堂の風景で印象的なのは本堂前の石段。緩く、段の幅がたっぷりとられた特徴のある外見。
石段の両側から覆い被さるように楓が枝を伸ばしている。秋には紅に染まった見事な景色が見られる。
 劇場版鬼平犯科帳では、鬼平と昔いきさつのあった荒神のおとよが街をゆく長谷川平蔵を見かける、という場面で使われた。
おとよは三重塔向かいの茶所に大坂の白子屋配下の用心棒といて、鬼平は着流しで笠を抱え参道を本堂のほうから門のほうへ下ってゆく、というものである。間隔のひろい石段と坂の途中にある灯籠が映っている。
劇場版だけでなく、吉右衛門版の鬼平では、真如堂が多用される。

山門  外から 山門  境内から
 朱も鮮やかな山門は、大目付筆頭・京極丹波が領地転がしで諸大名を手玉にとる話・幕府お耳役檜十三郎「大名馬鹿 罠にかかった六万石」で、河内守移封のきっかけとなった元妾が、十三郎に忠告されるも聞かず怒って立ち去るシーンに使われた。そのあと刺客が出るくだりでは、門を入ってすぐの、金戒光明寺へ抜ける、去来ゆかりの塔頭が建つ路地が使われていた。
門では、鬼平の密偵・伊佐次が飴売りに身をやつして探索中の姿も見られた。
本堂
 本堂は、鬼平犯科帳3「忠吾なみだ雨」では、新堀端の竜宝寺で、珍しく相愛となる娘をならず者から救う木村忠吾の姿が本堂前に見られる。
同3「おしま金三郎」では、強引な捜査でお役御免となる火盗改同心が密偵から報告を受ける場面で使われた。
同じく3「密偵たちの宴」では、偵察中のおまさの姿が見られる。
茶所 手水場
 参道の左手、三重塔の向かいには茶所が、塔下には手水場がある。
茶所は、鬼平犯科帳3「妙義の團右衛門」で、鬼平に一泡吹かせるため江戸へ出てきた盗っ人・團右衛門が、愛宕権現で平蔵を見かけたあと入る茶店に使われた。ここは、緋毛氈を敷いた床机をセットして茶店に使われる例が多い。設定はたいてい江戸市中で、縁日からの流れで使われることも多い。
八丁堀捕物ばなし「おとうと」では、狩谷新八郎と杉山虎之助が蕎麦を手繰っていて、岡っ引の注進が入るシーンで使われた。この場合も茶所の前に床机が出されている。
剣客商売「井関道場四天王」では、協力して子供を助けたあと意気投合する秋山大治郎と渋谷寅三郎の姿が、同じく茶所前の床机にある。
 手水場は、茶所とセットで映ることが多い。先に挙げた作品のなかでも複合使用例がある。
暴れん坊将軍IV「鳩笛慕情!姫君の供は将軍さま」では、お転婆の公家の令嬢に振り回される徳田新之助のくだり、その桜子を連れてゆく芝の八幡さまの縁日のシーンで、参道坂や本堂と合わせて使われている。
鐘楼 鐘楼から三重塔を望む
 鐘楼は、鬼平犯科帳3「密偵たちの宴」で、最近密偵たちが妙に活気付いていることをおまさに問う平蔵のくだりで使われた。
暴れん坊将軍IV「おやこ喧嘩の大手柄!」では、ドジ堪と仇名される、一人もお縄にしたことのない中年の岡っ引と話す徳田新之助の姿が鐘楼に見られる。二人は屋形の下にいて、背景に塔やお堂、東山の峰々が映り込んでいる。
三重塔 墓地から塔を遠望
 真如堂の塔は、三重塔。雲肘木や垂木の断面が白く塗られているのが特徴的な、こじんまりしたもの。
仁和寺の塔や東寺の塔のような使われ方ではなく、背景に映りこむことが多い。
例えば、鬼平犯科帳8「眼鏡師市兵衛」で、非番の日に先祖の墓に参る火盗改同心・木村忠吾の背後に映り込んでいたりする。
暴れん坊将軍IV「天下一の夢を売る男」では、実は狩野派の当主の血を引く青年画家が似顔絵商売をする芝の縁日の点景に使われている。
 墓地は、塔裏手に広がっている。林に囲まれた、丘の上の明るい場所で、しめっぽさは感じられない。
ここは、「今千姫」で、仇討ちの谷中斉明寺墓地として使われた。必殺仕事人・激突!「弁天小僧のかんざし」では、師匠の墓に詣でる役者・菊之丞のくだりで使われ、塔が背後に映り込んでいる。
本堂裏手 墓地裏の路地
 本堂を裏手から見ると、大屋根の破風が造形美を見せている。お堂が巨大なので、懸魚も大きい。
この面が立ち回りのバックに使われた例に、暴れん坊将軍IV「誇り高き逃亡者!」がある。また、鐘楼を使う際背景に本堂破風が映り込むこともある。
 本堂裏手は、少し行くと崖になって落ちている。丘の端には南の金戒光明寺墓地へ通じる細道がある。写真上右がそれで、会津墓地の前へ出る。
ここも撮影に使われることがある。鬼平犯科帳3「密偵たちの宴」で、豆岩が大滝の五郎蔵に、ターゲットの情勢変化を急報の姿が見られる。設定は浅草福寿院の小道。

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