時代劇の風景 ロケ地探訪
− 金戒光明寺 塔頭と路地 −
光明寺には、十あまりの塔頭がある。その大半は丘の西側に建ち並ぶ。 塔頭をめぐる路地が縦横にめぐらされ、いずれも趣き深いもので、南北のものは坂道となる。 |
長安院下坂 左見上、右見下ろし |
長安院は鐘楼の西にある塔頭で、これに通じる南北の道は間隔の広い緩い石段となっている。左手はちょっと崩れ気味の土塀、右手は石垣。 必殺仕掛人「横を向いた仕掛人」では、切支丹伴天連をターゲットに入洛の梅安たちがゆく「京都」の記号の一つとして、大文字山などと共に使われた。 助け人走る「裏表大泥棒」では、妹に手を出したとかんかんになって勤番侍をボコボコに殴る、中山文十郎の姿が見られる。 吉宗評判記 暴れん坊将軍「天下御免のお年玉」では、増長して上様に懲らしめられる御数寄屋坊主の屋敷が長安院。 名奉行 遠山の金さん「美女が恨みの刃」では、深川再開発に絡み消されかかる放火実行犯が襲われる路地。 剣客商売「井関道場四天王」では、道場の後継争いで消される剣客の死体発見現場の市ヶ谷の寺町。 御家人斬九郎「恋文」では、佐次が聞き込みにゆく番所の背景。 映画憑神では、不遇の上に疫病神に見込まれてしまった御徒士が、最後の邪神と出会う坂がここ。坂の上、脇の道からまず手鞠が、次いで可愛らしい女の子が顔を出す。家へ帰れず腹を空かせたその幼女を組屋敷へ連れ帰り飯を食わせてやる彦四郎だが、愛くるしい少女の正体は、「三囲神社」ならぬ「三巡神社」の祭神中最強最悪の「死神」なのであった。 |
永運院下坂 | |
永運院下坂 見下ろし |
永運院は本堂の西側にあたる塔頭で、ここへも南北の道が通じている。段はつけられておらず、緩い石畳が延々と続く。両側には石垣あり、焼杉の板塀あり、漆喰の土塀ありと、変化に富む。石垣に絡む蔦は、無いときもある。 ここは、黒谷の路地で比較的よく使われる坂で、設定も江戸市中から地方の城下町とバラエティ豊か。 鬼平犯科帳「のっそり医者」では、先に本堂下の石段が使われ、その後切り替わる場面はこの路地である。坂下の道標なども映りこんでいる。 源九郎旅日記 葵の暴れん坊「葉隠は金魚侍と見つけたり」では、佐賀入り早々のお控え様一行が藩士に突っかかられるのがこの道。藩士を演ずるのが医療タレント・立原啓祐なのも面白い。 |
善教院は、三門の西にある塔頭。南北の坂があり、上部は石段。片側は疎林で開けている。 吉宗評判記 暴れん坊将軍「百鬼、一刀両断!」は、使番衆の腐敗を糺す一話で、善教院が使番の一人で任務半ばでこっそり江戸へ帰還している青山左京太夫邸に設定されている。 御家人斬九郎「母の夢」では、お見合いで斬九郎を見染めた鍋島藩留守居役の令嬢が拉致される場面で坂が使われた。父の留守居役は同刻本堂の裏手で斬りかかられたりしている。 |
東西の路地 | 瑞泉院 |
三門を登りきって本堂への石段前に立つと、そこは東西の道となる。東へ行けば墓地の丘で、西は塔頭群のある明るく開けた広い道となる。 ここでは、正面に太い築地を見せた瑞泉院がよく使われる。築地は鏝で細工されているのが特徴である。 吉宗評判記 暴れん坊将軍「江戸育ち女棟梁」は芝増上寺の工事をめぐる陰謀で夫を亡くした女が意思を継ぐ話で、悪企みの黒幕の寺社奉行の屋敷がここに設定されている。IVシリーズでは尾張柳生の江戸道場になっていた。 |
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・黒谷 表紙 |
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