河川用語解説  さ行

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サイクル
・オブ
・ランドフォーム
米のW.M.デイビスが提唱。
幼年期 侵食作用が始まった最初の時期。谷は狭いV字谷。川は急流と滝、下刻作用を行う谷と谷の間は平坦な原形面広く残り、高原状を呈する。谷底狭く岩盤が露出。例;吉備高原、木曽川中流域
壮年期 侵食進み、殆ど元の地形がなくなった時期。急流や滝は次第に消滅。谷幅広く、谷底にも堆積作用始まり、谷底平野できる。例;アルプス、ヒマラヤ、日本アルプス。
老年期 川には急流も滝もなく上流〜下流まで水流が平均化した時期。川と川の間が次第に平地となり、侵食・堆積作用ともにあまり盛んではない。例;北上山地、阿武隈山地
準平原 老年期過ぎ殆ど元の平らな原地形に近づいたもの。地表にはところどころ元の地形の固い部分が山地として残る(残丘)。時が過ぎると準平原は再び侵食の輪廻繰り返すことも(隆起準平原)。例;中国山地
三角州 河川が海または湖に注ぐところで流水が流速を失うことや河水と湖・海水との溶在成分の差異によってコロイドを作ることなどにより運搬してきた土砂を堆積してできた陸地。三角州の平面形は河川の堆積作用と海の侵食作用および海底の地形などにより支配され、円弧状三角州・カスプ状三角州・鳥趾状三角州などの形となる。三角州の典型例はナイル川の三角州で、その形がギリシア文字のDに似るところからデルタと呼ぶ。三角州上の河川は多く分流し、堆積物は構造上三つに分けられ、最上部の表面の緩斜層を頂部層、その下部前面の緩傾斜している底部層という。三角州の成長速度には違いはあるが、カスピ海テレワ川で年平均進出速度465mイタリアのテベレ川で4m、宍道湖の斐伊川では約20m。
逆三角州
 湖沼の排出口が水位のあまり差の無い他の湖沼・河川・海湾に開いている場合にこれらの川や湖の増水・氾濫・上げ潮により水が逆流すると、排出口の流れの上流に向かい水の運搬物質が沈殿して堆積地形を生ずる。これを逆三角州と呼ぶ。水が逆流することと水位の差が少ないことが原因。例;北上川下流の湖沼地帯・利根川中流以下の沿岸地帯の湖沼にはその例が多く、印旛沼などにある。潮汐による場合は潮汐逆デルタという。
隆起三角州 三角州が隆起して高くなったもの。今まで堆積を行っていた河川は、隆起の結果堆積を休止し三角州の末端から浸食を始める。三角州表面の傾斜に応じ必従的に新しい小谷ができ、その支谷として無従谷が発達し三角州は細かく開析されてゆく。隆起三角州は、全く地殻運動による場合と、海面下降により侵食基準面が低下することによる場合がある。開析三角州と称することも。例;三方原、磐田原、武蔵野台地の一部(古多摩川の造った隆起三角州)
円弧状三角州 弧状三角州とも。三角州の平面形で、先端が円弧状に海中に突出した形のもの。海水の破壊力が小さく、各分流の川口で放出した土砂が海水で少し側方に運ばれた場合、あるいは本流の流路がたびたび変化する場合などにできる。例;ニジェール川、黒部川、錦川(岩国川)
扇状地三角州
 山地が海に迫るところでは、海岸にできる三角州は粗粒物質でできて扇状地の性質を持つ。この地形を扇状地三角州といいふつうの三角州よりも表面の傾斜が急。例;黒部川扇状地
カスプ状三角州
三角州の形は河口付近における川の堆積作用と海の侵食作用との組み合わせにより決まる。三角州の前面に海食が強く働き、陸地が削り取られるのに対し、本流の河口付近だけで堆積が盛んで突出する場合には、海岸線の形が尖状となる。このような尖った平面形をもつ三角州をカスプ状三角州という。
鳥趾状三角州 水鳥が足を広げたような平面形をもつ三角州。一般に川の下流は分流して海に注ぐ。特に運搬してきた土砂の中に粘土が多い場合には川の流路が固定して鳥の足を広げたような形になり、分流ごとに海に突出する。海水の破壊力が極めて小さいことが必要条件。例;ミシシッピ川
複合三角州 二つ以上の川が河口を接し湖または海に流出する場合に、各河口に造られた三角州が連合して一続きになったもの。例;児島湾に流出する吉井川と旭川、琵琶湖に流出する日野川と野洲川
残丘
(モナドノック)
侵食から取り残され準平原上に孤立して聳える丘陵。残丘には硬岩のために取り残された堅牢残丘と分水界の位置にあったため取り残された遠隔残丘とがある。例;早池峰(北上山地の準平原上に聳える残丘)、米ハンプシャー州モナドノック山
酸性河川 水が酸性を持つ川。酸川・渋川ともいい、川の名になることも。火山地方で噴出物溶かす河川や温泉水混入する河川などには硫酸・塩酸多く含むものがある。鉱山開発により生じることもある。
鑚井盆地
さんせいぼんち
掘り抜き井戸が各地にみられる盆地。地下帯水層が周縁山地の高所から続いており盆地内でボーリングすると自噴する。豪中央部のエーア湖付近の大盆地は好例。
自然堤防 氾濫原を流れる河川の両側に自然にできた堤防状の高まり。洪水の際、水が両側に溢れて浅くなると同時に流速を減じてそこに土砂の堆積が行われる。主として川の下流部によく見られる。付近一帯が低湿地の場合、自然堤防は良い居住地となる。
湿地 地下水面が地表近くにある排水不良の土地。三角州や潟に接するところに多い。日本では利根川などの下流の水郷地方にあり干拓により耕地化が進んでいる。常に排水や堤防による保護を要する。
湿田 沼田とも。灌漑用水を止めてもまだ水の無くならない田。河口デルタや湖岸に多い。二毛作は不可。土地利用度を高めるためには客土した上高畦にする必要があるので重労働を強制される。
縦谷 山脈の間にあり山脈の走向に平行して発達する谷。吉野川・紀ノ川・北上川・阿武隈川などの谷はこの例。横谷に比べ長く、上流まで谷が開け農業が行われているケースが多い。
上水 飲料水を指し、これを供給するために水路・浄水場などが必要となる。古代ローマには上水道が大規模に設置され、英国では17世紀初頭にロンドンなどに設置。江戸期には井の頭池を水源とする神田上水、多摩川を水源とする玉川上水が作られた。上水道の水源としては河川・湖沼などの地表水や井戸水・泉などの地下水を用いる。河川水源の都市は東京・大阪・名古屋・横浜・広島など。湖水水源の都市は京都・会津若松など。井戸水源の都市は高田・佐賀・福井など。泉水源の都市は熊本・鹿児島など。
循環水 広義には大気中の水分が雨となり流れ、海に入ったり地中に沁み込んで地下水となりそれが泉となり地表水となって地表・海水面から蒸発して大気中に帰る水。その量は世界全体で一年間に約3.71万立方km
狭義には地表水が地下水となり再び地表水に帰る水をいう。
侵食 地表面を削り取って低平にする経過。広義には岩石を風化し岩屑を運搬し地表を削り下げていく経過を総称。それらの経過は外部から働く力によるが、力の生じる媒質の性質により河食・氷食・風食・溶食などに分ける。狭義には流水の侵食を指すこともある。
シルト 堆積物の粒径を表す分類名。一般に0.074〜0.005mmの範囲の粒径を示す。0.005mm以下のものは粘土。0.001mm以下をコロイド
水系 同一系統に属する水流。ふつう同じ流域内の本流・支流を一括していう。水系の主体は河川であるが湖沼の水も含まれる。
水源涵養林 雨水を地下に貯蔵させるためにある水源地帯の森林。森林は降水を葉や根で吸収、水は地下へ浸透して地下水となる。水源地帯の森林はこのようにして洪水を緩和し、流水を調節する。
水郷 河川の下流の低湿地な三角州地域で水路網が発達し舟による交通がしている地域。集落は自然堤防の上に盛り土をしたり、堤防で囲まれている。利根川下流の十六島付近は代表例。その他の例は木曽川下流の輪中、筑後川下流のクリーク地帯、ポー川下流、揚子江下流のクリーク地帯、オランダのポルダー。
水車 流水のエネルギーを利用し車を回す装置。農業的には精米・製粉などに利用。
水車集落 動力源を人畜のみに頼る時代に、山麓や断崖下の川筋には水車を設置、精米・製粉・紡績などの小規模な工業集落が立地した。米・アパラチア山脈東麓の滝線都市は水車集落が発達したもの。六甲山麓・生駒山麓・関東山地東麓・長野県須坂市などに水車集落に起源をもつ集落・都市がある。
足踏み水車 足で踏んで車軸を回転させ水を汲み上げる水車。原始的な水車で、東南アジア米作の灌漑に多く用いる。日本では灌漑ポンプの普及により急速に減少し、現存数は僅か。
ガラ紡 三河地方で明治初年より行われた水車動力による紡績。名は作動時の音から。ふつうの水車の代わりに舟に外船をつけ動力にしたものもあった。矢作川・天竜川下流で行われ、こちらは舟紡という。
水を堰きとめるために水路の中または流出口に設けた構造物。水はこの上を越して流れる。水路の流量の測定にも使われる。取水堰・潮止堰・制御分流堰などがある。
先行谷 地盤運動が行われた後も以前の流路をそのまま保って流れている河谷。流路の途中の部分が隆起しても河流がその隆起部を隆起の速度と少なくとも同じ速さで下刻する場合には、川は流路を著しく変えること無く以前の流路のままである。このような河川を先行川、このような流路を先行性流路という。例;天竜川が赤石山脈南西部を横断する部分、吉野川が四国山地を横断する大歩危・小歩危付近は先行谷の例。
扇状地 河川が山地から平地へ流れ出す場合に流速を減じるので、これまで運搬してきた土砂や礫を谷の出口に堆積し、扇形の地形を造る(等高線がほぼ同心円状に配列している)。これが扇状地で、沖積扇状地ともいう。表面の勾配大きい場合、沖積錘という。砂礫が厚く堆積しているため、扇状地上の川の水は地下に浸透し伏流水となる。扇頂部には比較的水があるが、扇央部は高燥(ために開拓遅れ桑畑・果樹園に利用される)、扇端では伏流水が泉となって湧出(水田生じ集落発達)。日本では山地と平野の境が断層崖になっている所多く扇状地の形成に適している。中部地方の盆地内・山形盆地には多数の扇状地が発達。
.・扇頂は扇状地頭部で谷口に近い部分を謂い、川には表流水見られ扇央ほど水利が悪くないので谷口集落生じることも。扇央は地下水面低く水利便悪し。
・扇状地の川は、土地特性が透水性に富むため河水は地中に沁み込み流量の少ない川では流水が扇端に届く前に全て伏流水になることがあり、川はふだん水の無い涸れ川に(末無し川)。扇状地表面を流れる川は一般に荒れ川の性格を持つ。
・断層山地の末端にはいくつかの川が平地に流れ込み、接続した扇状地を造ることがあり、複合扇状地という。例;甲府盆地、富山平野
・一般に細かい土砂ほど遠方に運ばれるので扇端に行くほど土砂の粒細かくなる。
・開析扇状地は、扇状地がその後の河川の浸食により刻まれている地形(洪積台地)。土地が隆起したり扇状地を造った川の運搬物質が減少すると扇状地が開析される。日本の山麓地帯に発達した古い扇状地はいずれも開析扇状地である。例;武蔵野台地
側刻作用 河川の浸食作用のうち側方を侵食する作用。幼年期の河川は下刻作用が優勢であるが次第に側刻作用が著しくなり谷幅を広げて壮年期の河川となる。ふつう、屈曲した河道の攻撃斜面が削られ岸が後退する。側刻作用により氾濫原が広げられる。

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