川を訪ねる旅

鯖街道

■  4. 鵜の瀬  ■

 鯖街道・国道27号をJR東小浜駅の南・東小浜駅前交差点から南に入り35号久坂中ノ畑小浜線を遠敷川沿いにゆく。
ここも京へ鯖を運ぶ道のひとつであった。

遠敷川

 遠敷川を遡るその道沿いには若狭一ノ宮の若狭姫神社、若狭彦神社や神宮寺があり、更に奥の下根来には奈良・東大寺修二会の「お水取り」で二月堂前の若狭井から汲まれる閼伽水が送られるという伝説で知られる「鵜の瀬」がある。
 東大寺で行われる春を呼ぶ行事のクライマックスとなる「お水取り」は行事自体の名とされるほどポピュラーだが、その水はここ若狭の鵜の瀬から送られることになっている。毎年三月二日に行われるそれは「お水送り」と呼ばれ、闇の中での行事は古代インド風とも修験道風ともとれるアルカイックなものである。行事の中身は、遠敷川中流の「鵜の瀬」に神宮寺の閼伽井から取った香水を捧げ入れるというもので、秘密結社の構成員のような白い尖った頭巾を被った神職が護摩を焚き松明を持って行列する。
 こうして捧げられた閼伽水は地下水脈を通って奈良の東大寺に至るとされている。はるか昔から連綿と続けられてきた神聖な行事である。

 夏の盛りの鵜の瀬には古怪な行事の影もなく、近隣の「川ガキ」が喚声をあげながら遊ぶ姿が見られた。高所から淵へ飛び込む威勢のいい男の子や、浮き輪をつけて水に親しむ幼子などを見ていると、寒い時期に行われる神事の厳かさと夏の河童の遊び場との落差におかしみを感じつつ、くらしに密着した川を持てるのは幸福なことであると思った。

鵜の瀬の淵の入口に立つ鳥居。門前には河童の乗ってきた自転車が置かれている。

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撮影地  福井県小浜市下根来       撮影日  2001.8.14


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