川を訪ねる旅   疏水の庭

對龍山荘

■  南庭の流れ  ■

 南庭では治兵衛お得意の軽快な流れが明るい芝地をめぐる。園池と並んでこの庭の大きな見どころである。
さらさらと流れる遣水には護岸に蛇籠を用いたり流れの中に蹲踞を置いたりと、さりげない演出が各所になされている。

 遣水(やりみず)は庭の南端から来る。流れ始めの部分は小さな滝組となっていて、樹木で暗く覆われている(左写真)。
南庭を流れる遣水には築山から二筋の細い流れが入るように作ってある。自然の情景を閉じ込めた贅沢極まりないミニアチュアがそこにある。
 園池部分は伊集院時代からあったようだが、この南庭は植治が増設したもの。

築山前の流れ 聚遠亭

 滝組から流れ出した遣水は低いが樹木が鬱蒼といってよいほど植栽された築山の下をめぐる。
築山の対岸の左岸側は芝地で、低木がまばらに植えられている。
 このあと遣水は母屋居間棟・聚遠亭・茶室のほうへ流れてゆく。

巧みに岩で堰き止めた池 庭南端からの流れが池に流れ込む
左手の植え込み奥から別系統の流れが 築山からの別系統の流れが入る

 母屋・居間棟の前で浅い流れは堰きとめられ小さな池を作る。池には築山から別の流れが注ぐ(上写真右端)。池には錦鯉が悠々と泳いでいる。池を出て再び流れ出した遣水は聚遠亭と茶室の前に出る。

 聚遠亭前の遣水。土止護岸に蛇籠、流れに飛石、汀にトクサの植栽と密に演出がなされる。最も心を砕いて作った部分なのだろう。

 土止護岸の蛇籠。
竹で編んだ籠に石が詰めてある。
最近、多自然型川作りでもこれが用いられる例があるが流石にこのような高雅なものではない。
このような土止工にすらなされた細かい配慮、計算された美。

 この蛇籠ひとつで流れの表情が引き締まる。

 茶室前の遣水の流れの中に置かれた蹲踞(つくばい)
通称「流れ蹲踞」という、珍しいもの。
野村碧雲荘にも同様の蹲踞があるが、ここのものはどういった仕掛けか蹲踞の中から泉の如く水を噴出させていて、その肌を常に濡らしている。
なんとも行き渡った茶趣味であるが、この凝った小道具類がこの庭をいささか狭苦しいものにしているのは逆さ柱と言うものか。   

 このあと流れは大きく曲折し對龍台下の沢飛びを経て園池に流れ込んでゆく。


■對龍山荘表紙 ■ 園池 ■大滝 ■南庭の流れ ■水車小屋 ■珍客

■ 疏水の庭表紙


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