川を訪ねる旅 布留川を全部見る
ダムを後にして平地に戻り、天理市街へ。布留川はこの宗教都市の市街地に扇状地を開き、いくつかに流れを分けてゆく。
まず、先ほど上流で見てきた布留川北々流が最初の分流となるが、これは天理教本部北側に残る田んぼの中を流れて市街地の北辺をひっそりと西流してゆく。用水路とも溝ともつかぬ流れで、そこに住む人さえこれが名前のついた一級河川だとは思っていないだろう。
天理教本部
山を出た布留川は石上神宮の北を過ぎ、天理教施設群がひしめく中を流れてゆく。本部前を流れる布留川には天理大学や天理高校へ通じる道に大きな橋が架けられ、一見して川が流れているようには見えないかも知れない。ただ、よく統制のとれた町並みはきれいで、布留川にもゴミなどは落ちていない。水量が少ないのが難点であるが、流水には濁りもなく、魚をとりに川へおりている水鳥の姿も見かけられる。
この巨大施設群に阻まれてこの付近で取られている筈の布留川南流の源頭が判然としないが、地表流は天理教本部南にある高安詰所という大きなビルの下から顔を出す。名物の「彩華ラーメン」本店脇の道を南に入ったところである。暗渠から出た流れは古い集落の中を流れ、かつて生活用水として利用されていたことを偲ばせる川におりる石段なども残っている。
布留川はこの市街地でも旧国道25号沿いに流れてゆく。この付近の国道は親里大路と称されるが、両脇に大きな銀杏並木を従えている。秋には見事な黄葉が道に散り敷くが、昼頃には天理教の奉仕部隊が掃き清めてしまう。
国道沿いに流れてきた布留川は天理市役所を過ぎたところで道と別れ向きを南西に変えるが、このとき布留川北流を分ける。デルタ上には天理教施設がどん、と乗っている。水は用水として用いられる北流のほうに多く流されているようだ。川は分かれたあと再び最接近しひとまたぎも無い堤を隔てて流れる部分もある。用水路整備としては不自然なので、かつての乱流の名残とも思われる。
布留川本流はこのあと丹波市町という天理教成立以前からの古い宿場町を流れ、田園地帯へ入ってゆく。布留川北流も丹波市町を抜け、富堂川を分けて田んぼの中を流れてゆく。
田んぼと郊外型商業施設の混在する天理市西郊で富堂川を撮影したあと、昼食。消防署を北へ走ったところにあるお好み焼き「ひろっちゃん」へ。かつて天理本通の市場の中で営業していた店で、小味で廉価なお好み焼きを提供している。一訪の価値あり。昼食ののち、西部および南部郊外の諸河川へ。
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