大仏池水系

 この水系は、鏡池水系のように池が源ではなく、池を作り出す水系である。
大仏池は二ッ池とも称される溜池で、大仏殿の北西・戒壇院の裏にある。
近年、有志の方々の丹精が実を結び、隠れたホタルの名所となっている。

 池に注ぐ流れは、山際から来る細々としたもの。
東大寺の塔頭群の傍らを流れて大仏殿裏で合わさり、池に注ぐ。


■竜蔵院脇から講堂跡へ

竜蔵院の北 竜蔵院前 南望

 最も北の一流は、知足院の東の山から来る。
南西流する細流は、竜蔵院付近でようやく川らしくなる。
竜蔵院前の道を南に行くと、二月堂裏参道に通じる。

竜松院前 講堂跡へ向かう流れ

 小川は竜松院前を過ぎ、向きを少し南に振り、講堂跡の芝地に谷を刻んでゆく。

■二月堂裏参道

二月堂 若狭井

 暖冬傾向にある昨今でも、お水取りが済まないと春が来ない気がする。
お水取りは正式には修二会という二月堂で行われる行事で、御本尊の前で十四日に亘って悔過の修法がとりおこなわれる。
お水取りはその行のひとつで、堂前にある若狭井から御香水を汲み上げることを指す。
この水は、遠く若狭は遠敷の鵜の瀬から送られるとされている。

二月堂裏参道 裏参道とクロスする流れ
宝珠院前

 その二月堂の裏参道沿いに流下する小川も、末は大仏池に入る。
主な水脈は二月堂の裏山から出て、途中から参道沿いとなる。
浅い流れだが、時には川中に沢蟹を見ることもある。

大湯屋前の池 矢印が源頭 鐘楼下坂から大湯屋 矢印が溢水口
谷脇から見た大湯屋 大湯屋下の谷

 この小川には、大湯屋前の池水からの小川も入る。この源は鐘楼と四月堂の境付近。
上写真下段右は、大湯屋の西で合わさった後の流れ。

■講堂跡

 講堂のあった場所は、大仏殿の真裏。
今は整然と並ぶ礎石があるのみで、一面の芝地に疎らに木が生えている。

合流点 合流後 西望
講堂跡の川面 礎石と大仏殿

 この水系の水は講堂跡で集まり、芝地に谷を刻み西流してゆく。
この北には正倉院が建つ。

■大仏池へ向かう

大仏殿裏の谷

 講堂跡から下では、鬱蒼とした林に覆われるようになる。
大仏池には、南東端に注ぐ。

流入前の川面 大仏池池上
大仏池 溢水口

 冬季には水が半分ほどしか無いこともある。
満々と水を湛える折には、大仏殿の大屋根が水面に映りこみ絶景となる。
夏にはオオフサモが繁り、これを食べに来た鹿が首まで水に浸かっているさまが見られる。
池尻は南西角。吉城川へは町割通りに流れたあと押上町で注ぎ込む。

大仏池下(西方)の流れ

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