川を訪ねる旅 疏水の庭
■ 概説 ■
山県有朋は「無鄰庵」と名付けた庭を三つ作っている。ひとつは生地・長州に、ひとつは京都・鴨川べりの旧角倉邸(現・がんこ二条苑)、いまひとつが南禅寺近くにあるここで取り上げる「無鄰庵」である。
長州のものは小規模な草庵で、旧角倉邸は手は入れたものの元からある庭。東山のこの庭こそ山県の理想が現出されたものと言えよう。
無鄰庵庭園の最大の特徴は大きな広がりをもつ明るさ、ということに尽きる。
素材も変わっていて、他ではあまり使われていなかった芝を張ったり、日本庭園にあるまじき大きなモミの木が植わっていたりする。
ごく小さな起伏の芝地を浅い小川が陽をはじいてきらきら光りながら流れるさまには心躍るものがある。
悪口ではないのだが、この日先に拝見してきた對龍山荘の肩がこるような作りこみとはまさに対照的であった。
建物は敷地の片方にまとまってあり、主屋前には明るい芝地、その奥には林があり池を囲んでいる。池の上手には滝組があり段になって疎水の水を落としている。
浄土庭園のしらじらとした明るさとは異なり、西洋の匂いを感じさせる風景である。
山県がこの庭を手がけたのは日清戦争が終わった頃で、明治政府に重きをなした政治家の気概なども感じられて興味深い。
主屋は木造二階建て、洋館は漆喰の重厚な二階建てで、茶室は簡素なものである。飾り気というものがあまり無い。
以降は庭の詳細を見てゆきたい。
無鄰庵扁額 |
■ 無鄰庵表紙 ■ 概説 ■ 前庭 ■ 園池と滝組 ■ 主屋