大和川3次支流 ・流入先 〜米川〜寺川〜大和川 ☆大和川水系一級河川 訓:なかのかわ |
中の川支流 | ・百貫川 |
奈良県桜井市から高市郡明日香村を経て橿原市に至る、米川の支流。
桜井市高家の山中に発し西流、明日香村飛鳥で盆地に出て飛鳥座神社の下で北に転じ、桜井市出合町で米川左岸に注ぐ。
一級河川の起点は明日香村飛鳥前田。
中の川は、古称を八釣川(やつりがわ)と言い、万葉の歌枕である。
八釣の里には、顕宗天皇の近飛鳥八釣宮が置かれたとされ、宮跡が残されている。
八釣川 水底絶へず行く水の つきてぞ恋ふるこの年ごろを 柿本人麻呂歌集 (万葉集巻12-2860)
■ 源流
桜井市高家 棚田を縫う流れ |
中の川の流れはじめは、八釣山の奥、桜井市高家(たいえ)の標高200m強の高原にある。
一帯には傾斜地に棚田がびっしりと作り出されていて、水はその田の端を伝ってくる。
ゆえに流れは田の形に沿ってくねくねと曲折し、上の田から下の田へ落ちる際には細かいカスケード状の段差を経ることになる。
一見なにか公園のような仕様であるが、流量は思いのほか豊富である。
中の川は、源流部で緩いピークを隔てて米川と水を分け合う。
分水嶺の丘には、六地蔵が飛鳥の里のほうを見はるかす格好で立っている。
地蔵前の道標は、ここが分水嶺であると共に三方への道別れであることを示す。
■ 上流
桜井市高家 谷の終わり付近 | かぶら堰 |
赤蕪を洗う水 | かぶら堰下の流れ |
棚田を下った水は、里に出る頃にはずいぶん川らしくなっている。
この里川には、面白い堰が見られる。
ごく浅い川に土嚢を積んで湛水をつくり、そこに収穫した根菜類がきれいに並べられ流水に漬けられている。
芋洗い水車と同様昔から行われてきた洗浄方法で、今となってはまことに贅沢なシステムと言えよう。
赤い蕪が整然と並んださまは、愛らしく美しい風景である。
近くには洗い終わった大根が積まれ、出荷を待っていたりする。
桜井市高家・明日香村八釣境 左上流、右下流望 |
高家の里を過ぎ明日香村に入るあたりも、まだ棚田の中。
護岸は木の板でなされ、堰ぎ板をはめる切り欠きがついている。
谷口方向を眺めると、橿原市街のビル群の向こうに畝傍山の雄渾な山容が望まれ、その背後には二上山のふたこぶが頭を出している。二上山は、大和や淀の流末となる難波の海辺からも眺められる山である。
■ 下流
明日香村奥山・飛鳥地区境の県道124号から 左上流、右下流望 |
上写真左奥の里は飛鳥の里。小丘は飛鳥座神社の鎮まる丘。写真右奥遠景は香久山。
一帯は一面の農地。古い石積護岸が草に埋もれる。
明日香村奥山の里 左上流、右下流望 | |
古い様式の河床 | 河畔から西望 畝傍山と二上山 |
奥山の集落に入る頃には、護岸もなされ直線的な水路状となる。簡単な堰や水門も見られる。
一帯は宅地以外は広大な農地。
橿原市南浦町 左上流、右下流望 |
橿原市に入り、香久山の西を北流し、JR桜井線香久山駅西方で米川左岸に注ぐ。
川幅は広くなるが、宅地内や道沿いでは狭くなり短い暗渠も見られる。
川中の砂州には、タヌキの足跡なども見られる。
香久山(かぐやま)は大和三山のひとつで、そのなだらかな女性的山容が愛され、畝傍・耳成を抑えもっとも多く歌に詠まれた山である。
春過ぎて夏来るらし 白妙の衣干したり 天の香久山 持統天皇 (万葉集巻1-28)
ひさかたの天の香久山 この夕 霞たなびく 春立つらしも 柿本人麻呂歌集 (万葉集巻10-1812)