河川用語解説  ま行・や行

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埋積谷 堆積物により埋められた谷をいう。川の運搬力が減退して土砂を堆積して生ずる。堆積の原因には水量の減少・侵食基準面の上昇・荷重の増加などがある。ふつう埋積谷は幼年期の谷あるいは壮年期の谷の中に種々の原因で堆積が生じて造られる。この場合堆積物は相当に厚く、谷底平野と谷壁との境は傾斜の変換点を表し明瞭である。老年期の谷にも堆積が行われ埋積谷を生じることもある。
水際部 河川や湖沼の水面と地表面が交わる部分を指す。一般に水際部は水域・陸域入り組み、多様な環境がある場所で、生物の棲息・生育上重要な役割を果たす。
水資源 水全体の97%は海水、淡水は3%でその3/4は万年雪と氷河。約1%が河川や湖水。陸上水は補給速度の早い河川水の利用価値大きく、ダムで堰きとめたりして飲料・灌漑・工業用水・発電などに使われる。地下水も重要な水資源。日本においては流水量の10%が利用されている。
水無川 涸れ川とも。ふだん流水が無い川。乾燥地方では一時的な豪雨の後だけ水が流れふつうは水が無い谷がある。これをワジウスなどと呼ぶ。湿潤地域でも扇状地のように砂礫層が厚いところでは表面水が浸透して伏流水となりふつうは流水をみない川ができることがある。
水屋 輪中集落の中で洪水時の避難所として建てた家屋。宅地内に更に盛り土した上に建てた二階家で、階下には食糧や諸道具を置き階上には貴重品を納める。洪水時はここで生活する。現存数僅か。
cf.水塚 水城とも。利根川・渡良瀬川合流点付近の低湿地の農家では洪水対策として宅地の一部盛り土して塚を築き、これを水塚という。水塚の上に更に建物を建て食糧や貴重品を貯蔵し、洪水時はここに避難し水の引くのを待つ。河川改修の進んだ現在では現存数僅か。
牟田集落
むたしゅうらく
牟田は湿田のこと。筑紫平野低湿地にみられる集落をいう。付近は水郷地帯で、排水と灌漑、交通手段も兼ねた水路が網の目のように分布し、水稲単作地帯。大牟田・上牟田・下牟田などの地名も。
無能河川 広い谷底平野を水量の極めて少ない川が流れている場合にその川を無能河川という。時には表面水がなくて伏流だけになることもある。この谷の地形を造るには現在の河流では力が不十分であるという意味。河川の争奪が行われると上流部を他の河川に奪われ下流部は無能河川となる。
網状流路 川の流路が分流したり合流したりして網の目様の状態を成すもの。荒れ川・扇状地・三角州などを流れる堆積の盛んな川によく発達。堆積物によりしばしば水流が妨げられ流路を変えやすいからである。例;天竜川、大井川ほか東海地方の多くの河川は網状流路をもつ。
谷地 湿地のことをいう。泥炭地のことをいう場合もある。沼沢地ほどではないが低湿な土地を指す。また、このようなところにある悪田を谷地田という。東北ではヤチと発音、地名になっているところもある。
遊水地 河川水が増加した時、その増加水の一部を導入して洪水氾濫を防ぐための池。例;利根川の赤麻沼・印旛沼・霞ケ浦など。築堤や上流の調節ダムにより不要化しているケースもある。
湧泉帯 地下水が泉となり湧き出す地点が帯状に分布する地域。扇状地ではその中央部に砂礫層が厚く堆積しているために河川の水が伏流水となり地下を流れ扇端において湧出する。この湧泉は扇状地の辺縁部に沿い列状に配列して湧泉帯を造りここに集落が発達する。
溶食 水が岩石を化学的に溶解する作用。この作用の代表的なものは石灰岩が地下水により営まれる化学作用で、特殊な地形を造り、これをカルスト地形という。
幼年期 地形発達の侵食輪廻における初期で、壮年期の前の時期。原地形の表面の総面積がそれを開析する谷の総面積よりも大である時期である。以前にあった大河川の他に新しい必従河川が発達し支流を増してゆく。分水界線の位置は不明瞭で谷壁と原地表面との間には傾斜の変換点がある。幼年期の河川は下刻作用が激しいので谷壁斜面が急で狭い峡谷を生じ、横断面形はV字谷を成す。水流は谷底の幅全体を流れ川原は発達していない。谷の縦断形は不規則で滝や早瀬や湖などがある。川が急速な谷頭侵食を行い流域を拡張して生存競争が激しいのも幼年期の特色。中国地方の吉備高原や中部地方の美濃三河高原などは隆起準平原が新しい輪廻の谷により刻まれ、幼年期の地形を見せている。

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