河川用語解説 た行
滝 | 瀑布とも。水流が地面を離れ落下する所。ふつう滝は岩石の硬い部分や地殻運動により生じた傾斜の変換部などにできる。本支流が合流する所で懸谷を成す場合にも滝を生じる。侵食が進むと滝を造る急崖は消失し上流へ向かい後退する。 |
蛇行 | 曲流・メアンダーとも。河川が曲がりくねってS字状に流れること。はじめは僅かに屈曲していた川が次第に湾曲しついに屈曲部が切れ三日月湖(河跡湖)を造る場合も。曲流部の外側の部分を結んだ線の間の地帯を蛇行帯という。 |
谷 | 細長い窪地。河川・氷河などの侵食作用や褶曲・断層などの地殻運動により形成。要因により河谷や氷食谷などの侵食谷、断層谷や褶曲谷などの構造谷、また、近接する山地の走向と谷の方向から横谷・縦谷の区分がある。cf.断層谷は断層線により生じた谷。谷底の両側に断層がある場合を地溝、一方のみ断層に限られる場合を断層角盆地という。ふつうは河水侵食により断層地形が変形。例;吉野川下流部・紀ノ川・豊川 |
谷口集落 | 渓口集落・谷口町とも。河川が山地から平野に出るところの谷口に成立した集落。谷間に通ずる道路に沿って街村を成すものが多い。谷口集落は山地の生産物(薪・木炭・繭など)と平地の生産物(米・塩・魚・日用品)の交易を主目的として発達。本来市場町としての性格を持つ町に周囲の余剰労働力を利用し製材や機業のような農村工業が起こった例が多い。例;関東山麓にある八王子・五日市・青梅・飯能・越生・小川・寄居鬼石・下仁田・渋川。 |
溜り | 河川本流より独立、陸域にある水たまり。 |
溜池灌漑 | 灌漑用水の水源が溜池であるもの。溜池は人工のものや河川と結びついているものが多い。雨の少ない地域で行われる。溜池の水は水温が高いので米作に適すが雨水を貯留し利用するため干害を受けやすい。日本では瀬戸内沿岸の高松・丸亀付近の讃岐平野、姫路平野、大阪平野の大阪湾沿岸、奈良盆地などで行われている。これらのうち香川県の溜池利用が70%に及び全国最高。満濃池は讃岐平野の3,900haを灌漑している。 |
ダム | 貯水の目的で河川を横切るように作った堰堤。水力発電・灌漑用水・工業用水・上水道などのために作る。 アーチタ゜ム 水圧を谷の両岸のダムの基部で支えるように設計、貯水池側に弧状に突き出た形のダムで、弧状にすると厚さの薄い堤防でも水圧に耐える。日本でいちばん多いコンクリート重力ダムよりもコンクリートの量が半分で済み費用が安い。例;米・フーバーダム(コロラド川)、黒部ダム、椎葉ダム。 アースダム 粘土や赤土、砂などで作ったダム。これらを適当に混合しローラーで固め水が漏れないようにし水圧にも耐えるようにしたダムと、更に水止めを完全にするためダム中央に粘土またはコンクリートの壁を作ったダムとがある。水がダムの頂を越えて流れると壊れるので、洪水の少ない地域に作る。これと似たものに岩石を積み上げて築いたロックフィルダムがある。例;北上川支流の石淵ダム、愛知用水計画の一部になった王滝川の牧尾ダム。 コンクリート重力ダム コンクリートを用いて作り堤防自身の重さにより水圧を支える形式のダム。高いダムには多くこの方法が用いられる。コンクリートや鉄材など多量に使うので地盤のしっかりした所に作られる。例;佐久間ダム、小河内ダム、奥只見ダム。日本にはこの種のダムが多い。 堰堤式発電所 川を堰き止めその水を用いて発電、河川の両岸が岩石により形成されているような地形を利用。河川を横切ってダムを作り貯水池としその水をダムのすぐ下に引いて水力発電所を作るのをいう。この方式はほぼ一定した電力が供給できる利点があるが、高度が大きい河床から水を溝で他に導き高度差作って発電する水路式発電所より経費が多くかかる。例;黒部川第四発電所。 水路式発電 自流式発電とも。自然の落差が大きい所に立地。河川水を水路により導き落差を作り発電する。ダム式より建設費が安いが、水量が季節により変化するので発電量にムラがある。大正期までは水路式が多かったが昭和に入りダム式が増加。 揚水式発電 水の多い豊水期に他の発電所の余剰電力を利用し水を貯水池に汲み上げ発電する形式。豊水期や深夜など比較的電力が余っている時期を利用して貯水池に水を汲み上げ、電力を多く使用する時期や渇水期などに発電を行い補う。 魚道 堰やダムなどの横断工作物において、その本体が魚類などの通過を妨げる場合、これを可能にする施設をいい、階段状のものや緩い傾斜をもつもの、呼び水式などがある。 |
段丘集落 | 段丘上にある集落。洪水・高潮の危険が少ないので集落立地の好適地。段丘面上に水田や桑畑を開く。相模川上流の桂川や天竜川の中流域によく発達。上野原・大月・伊那・飯田のような都市がある。 |
地下水 | 地中の土砂・岩石などの隙間・割目などにある水。地下水の表面には傾斜があり、その傾斜の方向に流れる。その速度Vは浸透係数Kと水面勾配h/Lに関係する。V=Kh/L地下水を自由地下水と被圧地下水に分ける。地表から最初の不透水層に関係した地下水を自由地下水という。ふつう井戸は自由地下水を汲み出す。 被圧地下水 不透水層によって上下を挟まれた透水層の中にある地下水。地質構造に支配され水圧を受けている。その水圧は大気圧よりも大きく、その水頭が自由地下水よりも高く上昇する。被圧地下水を利用する井戸を掘り抜き井戸という。 |
地下水灌漑 | 地中の自由地下水や被圧地下水を井戸や掘り抜き井戸で汲み上げて農耕地に水を供給すること。例;豪・鑚井盆地における掘り抜き井戸による牧草栽培、米インペリアル渓谷の果実栽培、インド・ガンジス上流で行われる畜力による地下水灌漑、我が国の「ぬるめ」による地下水利用の水稲栽培。 地下水面 地下水のうち、自由地下水の上表面を地下水面という。地下水面の位置は降雨直後は浅く、干天には深い。また、地表の高低の影響を受ける。地下水面が地表に近いところにあると湿地となり、地表に現れると泉となる。地下水面の高度はその場所の海抜高度から地下水面までの深さを差し引いて求める。各地点の地下水面高度から等高線描くと地下水面図が得られ、地下水の流動状態を推定できる。 |
沖積世 | 新世代第4紀、最後の氷期より現在に至る約一万年間。日本列島では各所に隆起・沈降・河岸段丘・沖積平野などが形成されつつある時期。 |
沖積平野 | 河川が運ぶ土砂で生じた平坦地。表面は低平、川はその中を蛇行し流れる。流路の両側に自然堤防が発達、扇状地・三角州もこれに属する。沖積地、氾濫原、氾濫平野、洪涵平野ともいう。 |
沈石 | 川底の石が砂・泥に埋もれている状態のこと。平瀬や淵に見られる。 |
底性生物 | 水域で岩などに固着したり砂泥中に潜入したり、或いは水底上を這い回ったりして水底から離れることなく生活している動物のことで、ベントスともいう。河川では水生昆虫・貝類・カニなどが該当する。 |
堤防 | 河川の氾濫を防ぐため川の両側および波の浸食を防ぐためか依願に沿って作った構築物。河川の土砂や砂礫などを多く堆積する場所では河床は上昇し次の洪水時には水位が高くなる。そこで更に堤防の上に土盛りをしてそれを続けると天井川になる。また、土砂・砂礫の採り過ぎのため河床が下がり堤防下部が崩れたりする。cf.川の両側に堤があるとき、河床側を堤外地、人家のある側を堤内地という。 護岸 堤防あるいは河岸が流水による侵食や、水が内部に浸透することなどを原因に破壊に至ることを防護するための構造物。一般に法覆工、法止工、根固め工から成る。コンクリート・石・杭・樹木など様々の材が用いられる。 三面張り 護岸にコンクリートなどを施してあるだけでなく河床もコンクリートやブロックで固定したもの。三方護岸とも。 |
天井川 | 川底が付近の平野面よりも高い位置にある川。山地から平地に急に川が流れ出し堆積が著しい川では川底が次第に高まる。洪水の時に自然堤防ができると、川はその間に多くの土砂を堆積してますます川底が高まる。特に、人工的な堤防を作ると、川はその外側に氾濫しにくくなるから川底の高まりは一層激しくなり天井川の性質が強くなる。例;野洲川・愛知川の下流域。 |
透水層 | 水を浸透させる地層。砂や礫など粗粒の物質から成る地層は粒子相互間の透間が大きいので、多量の水が流動しやすい。一般に利用しやすい地下水はこのような透水層が不透水層の上に存在する場合にこの透水層の中に貯水され、また流れている。地層の透水性の大小は透水係数(透水度)により表される。すなわち、断面積F(平方cm)、ある距離Iの水頭差h、流量Q(立方cm/sec)とすれば、Q=KFh/Iとなり、この式のKが透水係数。 |
渡頭集落 | 渡津集落とも。川の渡し場として発達した集落。街道に川の渡し場があると、そこを中心に旅館・茶店・渡し舟小屋・人足小屋などが集まって集落となる。従って対岸にも同様の集落(対向集落)ができる場合もある。例;大井川を挟む島田と金谷、浜名湖の今切渡しの新居と舞阪。フランクフルト・オクスフォードもその例で地名がそれを示す(英語ford独語furtは浅瀬の意で、渡河点を示す。例;フランクフルト−スタッスフルト、オクスフォード−ブラッドフォード)。橋ができると当然本来の機能を失い集落の性格は変わる。 |