中流の峡谷 天野川トンネルと磐船神社 大阪府交野市
■ 天野川トンネル
交野市私市 天野川トンネル入口付近 左上流、右下流望 |
山峡に入って間もなく天野川は堰かれ、その後山腹に掘られたトンネルの中をゆくこととなる。
磐船街道を崩し暴れる天野川を制するためのもので、隧道は水専用である。
川沿いの国道も、ここで新磐船トンネルに入る。
川と道とが仲良く並んで隧道に入るさまは奇観と言えよう。
(右手に見えるのが国道168号の新磐船トンネル)
磐船神社のほうへ行く旧道沿いの元の流路には、僅かな溢水が導水されている。
ちょうどトンネルの真下にあたる。
天野川トンネル下 旧流路への導水 |
■ 磐船神社
磐船神社境内の流れ | 岩窟めぐりの入口 |
磐船神社まわりの「旧天野川」には栗石が河床に敷かれ、水辺へおりるテラスなどがつけられている。
ちゃらちゃらの浅瀬は、天孫降臨の伝説を秘める巨岩の谷へと続く。
左写真は、磐船神社の御神体である「天の磐船」と呼ばれる巨岩。
物部氏の祖神・饒速日命(ニギハヤヒノミコト)がこの船状の岩に乗り天降ったとされる。
饒速日命は天照大神の孫にあたり、のち豪族・長髄彦(ナガスネヒコ)の係累を娶り、大和の地を治めることとなる。
神社は、古代の祭祀の花形であった巨石信仰を今に伝えるものである。
この大岩には、近世加藤清正が大坂城の石垣に使おうとして、あまりの大きさにあきらめたなどという奇譚も残っている。
←巨岩の前にあるのは拝殿
天野川は、岩窟めぐりが行われる巨岩の下へと流れてゆく。
岩の下をゆく水のさまも、この岩窟めぐりで拝観できる。
拝観者は、社で白衣に着替えて入ることになっている。
これには、狭い石組みの下をくぐることによって再生を期すという、胎内を模した他の洞窟でもよく見られる信仰がある。
■ 天野川トンネル出口
天野川トンネル出口 | 皚酵橋下の流れ |
上写真は、磐船街道の旧道と新道が会うところで隧道から出る天野川。新道もほぼ同時にトンネルを抜けてくる。
この下は峡谷になっていて、本流瀑などもあるが、現在磐船峡は荒れており、滝上の道は崩落している。
峡谷左岸側に聳える天孫降臨伝説の山・哮が峰を中心とした一帯には「府民の森・ほしだ園池」があり、ハイキングの好所となっている。
近年、森林鉄道風歩道橋や長大な吊橋「星のブランコ」が作られ、家族連れで賑わっている。