川を訪ねる旅

糺の森の川

 糺の森 

 下鴨神社参道

 糺の森は、京都市左京区下鴨の賀茂川と高野川に挟まれたデルタ地帯に鎮まる賀茂御祖神社(下鴨神社)の社叢である。古代の山城原野の面影を今に残す植生を持ち、京のまちのみどりとして御所と共に貴重なオアシスとなっている。
 改変の著しいデルタにあって、自然条件と人為の撹乱を受けつつ、ニレ科の樹木を中心としたであろう上つ世の姿をよく偲ばせる森である。林床植生も豊かで、時の移り変わりによる変遷はあるものの、まわりを都市型の住宅地に囲まれていることを忘れさせるビオトープであると同時に、葵祭や夏越の祓などの社の行事に加え、時には古本市などのイベントにも使われる、ひとの交流の場でもある。
 ずっと守られてきた泉川と、近年復元された瀬見の小川が森を南北に貫いて流れ、しっとりとした湿りを森に与えている。林間を流れる川を持つ森は都市という環境では珍しく、世界遺産などという冠を戴かずとも万人の護るべき宝であろう。

 左は下鴨神社境内図。
 社殿の右外側を流れるのが泉川。
 中央の鳥居の左手から流れるのが瀬見の小川。
 社殿の右手の池がみたらし池。
 参道や馬場は土道。


 まだ京の南に巨椋池もあった頃の参謀本部作成の地図を見ると、賀茂・高野の二川はY字の付近では伏流していたことが判る。その頃の糺の森は今よりいっそうしっとり湿り鬱蒼と木が茂り、伏流水もさぞ豊かであったろうことが想像できる。
河川の改修により多くの泉は失われたが、泉川が森を流れてくれているおかげで現在のわたしたちも糺の森というビオトープを目にすることができる。

参道左手の馬場
初夏には葵祭に先立ってここで流鏑馬が催される。

 池跡
かつては泉が湧き、満々と清水を湛えていたという。溢水は瀬見の小川へ流れていたと思われる。
時代劇のロケに使われることもある。

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・糺の森の川・表紙  ・泉川  ・瀬見の小川  ・ならの小川  ・みたらし池


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