淀川5次支流 ・流入先 〜室生川〜宇陀川〜名張川〜木津川〜淀川 ☆淀川水系 訓:りゅうけつがわ |
竜穴川は室生川に注ぐ小支流。
室生寺の北に鎮まる古社境内を横切り、水脈も絶え絶えに室生川に流れ込む川の源は、古代信仰の磐座から来ている。
室生寺と竜穴神社はどちらが先に成立したのかはわからない。室生寺草創期については不明な点が多く、竜穴神社の神宮寺であったかも知れない。八世紀末に南都・興福寺の末寺としての記録があり、平安期に密教化したことはわかっている。そののち南北朝から室町期にかけ本格的に密教寺院としての性格が強まり、山岳信仰とも相俟って今に至るが、金堂と本堂が並立する堂宇の形態を見ても宗派の確執が窺い知れる。
寺の変遷とはかかわりなく、竜穴神社は水神の鎮まる聖地であり続けた。大日照りの際にはここと貴船に朝廷から使いが来て幣帛を奉り雨を祈願したという記録が残っている。祭神は貴船と同じくタカオカミノカミを祀る。社の奥には室生火山群の造り出した洞穴が屏風岩の下にぽっかり口を開けており、手前には東谷の細流が巨大な岩盤を長年に亘って削った滑滝がある。山気著しく、なるほど竜神の棲家に相応しい雰囲気である。
室生を訪れる人のうちここまで足を運ぶ者は滅多におらず、社は閑散としている。ここから1kmも奥にある竜穴へ行く者は更に稀である。
境内風景 | 竜穴入口 |
屏風岩にぽっかりと開いた洞窟(左写真)。これが竜穴である。洞窟の対岸から遥拝するようになっていて、懸崖の座所が設けてある。谷(下写真)は見下ろすと怖いほど深く、細々と水を流す。昼なおほの暗い水気の強い処で、古来より聖地とされたのが頷ける。
↑竜穴の上にある滑滝
←社殿横を流れる谷
竜穴前で滝を成し深い谷を刻んで流れる水は社殿の北に出てくる。
このあと38号吉野室生寺針線をくぐって室生川右岸に注ぐが、道を越すと伏流してしまっている。
それほどささやかな細流が作り上げた風景で、歳月の妙、水の力を改めて思い知らされる。